第2話

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「こんな気持ちは初めてだ」  ヒカリは息を呑んだ。バドルが、自分の頭の中で浮かべたのと同じ言葉を口にしたからだ。途端、目の淵から雫が流れ落ちる。それを目にしたバドルは目を見開き、そしてゆっくりと顔を寄せた。唇が触れ合って、バドルが軽くヒカリを吸い上げる。その感触に心臓が大きく脈打ってヒカリは呼吸を止めた。 「……すまない」  バドルはすぐにヒカリを解放すると、謝罪の言葉を口にした。  どうして謝るのだろう。自分たちが同性同士だからだろうか。だけどヒカリは少しも嫌だとは思えなかった。  どこか後悔したようなバドルの表情に不安を覚えて、ヒカリは自分からバドルに身を寄せた。バドルの手は惑うようにヒカリの肩に置かれ、躊躇うように背を辿っていく。バドルを強く引き寄せると、ようやく同じ強さで抱き返されてヒカリはほっと息を吐いた。  もしもこのままバドルが傍にいてくれるのなら、復讐心を捨て去り、この先を生きていたいと思えるかもしれない。
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