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しかし、ヒカリがそのすべてを知るのに、そう時間は掛からなかった。
「ヒカリさえ嫌じゃなければ、俺に生活の援助をさせてくれないか?」
ある夜、バドルがそう切り出した。
「いいよ、そんなの……」
ヒカリは困った顔で僅かに首を横に振る。
「遠慮なんかいらない。ヒカリの力になりたい俺のわがままだ」
バドルの申し出はヒカリを思ってのことだろうし、ヒカリが困窮しているのも事実だ。それでも金銭的に頼ってしまうのはどうしても抵抗が生じた。
「学校も行った方がいい。父上が苦労してここまで進学させてくれたんだろう?」
バドルは言い聞かせるようにヒカリの髪を撫でる。
「もし金を出されるのが嫌なら、借りるという形にすればいい。今はしっかり学業に専念して、将来きちんと仕事に就いたら少しずつ返してくれれば構わない」
ヒカリの立場になって色々考え、支えようとしてくれるバドルの気持ちがありがたかった。
王が憎いと思う。未だに父と同じ目にあわせてやりたいとも思う。だけどその目的を遂げようとすれば、ヒカリの命と引き換えだ。自分はそれでいいと思っても、父やバドルがヒカリが生きていることを望むなら、それに応えたいと思うようになった。
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