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「わかった。……ありがとう」
はにかみながら礼を伝えると、バドルは安心したように笑った。
このまま朝が来なければいい。そうすればずっと一緒にいられるのに。不意にバドルがヒカリへと手を伸ばす。しかし触れる寸前、突然バドルが動きを止めた。
「バドル? どうしたの?」
バドルはヒカリの声も届いていないように、強ばった顔つきで周囲を窺う。訝しんだヒカリが再びバドルの名前を呼ぼうとすると、伸びてきたバドルの手が口を塞いだ。
「静かにしろ」
小声で短くバドルが命じた直後、複数の足音が近付いてくるのがヒカリの耳にも聞こえた。穏やかでない気配にヒカリは身構える。
「そこで何をしているっ」
程なくして現れたのは五人の人影だ。薄暗く、最初は相手が何者なのかわからなかった。しかし、暗闇に目を凝らし、距離を詰めてきた集団の出で立ちを確かめると、それをすぐに知ることができた。ヒカリと同様の長衣の上に腰巻きをして剣を下げ、肩には長筒の銃を掛けている。そして、左の腕に巻いた布に記されているのは王家の紋章だ。この集団は、間違いなく国の兵隊だった。
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