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バドルの手は既にヒカリの口を塞いではいなかったが、肩口に移動した指先は、ヒカリに縋るように力がこもっていた。
バドルはズィップの一味だ。そのことが知れれば間違いなく捕らえられてしまう。
「月が綺麗だから眺めてただけです。それともこの森に入るのは国の許可がいりますか?」
もしも過去に企ていた計画を知られてしまえば、ヒカリは即刻死罪になるだろう。けれど今はそんな恐怖よりも、バドルを守ることで頭がいっぱいだった。
盾突くようなヒカリの言葉に、集団の隊長らしき年配の男が、ヒカリをぎろりと睨み付けた。
「ここのところ、深夜にこの近辺をうろつく不審な男がいるとの情報があったのだ。お前達のことではないのか?」
その言葉に、ヒカリの背後でバドルが息を詰める気配がした。
「知りません」
震えそうになる声をどうにか堪えて、ヒカリはきっぱりと答えた。兵士はヒカリを試すように威圧的に見下ろす。
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