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「まあいい。それが真かどうかはご同行頂いた先でじっくり確かめさせてもうらうとしようか」
男が掲げた右手を振ると、背後に待機していた兵士達が一斉にヒカリたちに近付いてくる。
「嫌だっ、離せ!」
兵士に腕を掴まれて、力任せに引っ張られる。どうにかバドルだけでも逃がしたいと思い、ヒカリは身を捩って背後を振り向いた。すると、今まさにバドルを捕えようとしていた若い兵士が、なぜか不自然にその手を止めた。
「隊長っ!」
若い兵士は慌てて振り返り、強張った表情で年配の男を呼んだ。
「どうした、何事だ?」
呼ばれた男は怪訝そうに若い兵士に近付く。状況を確かめるように手にしたランプを突き出したのち、若い兵士と同様に、目に見えて焦り始めた。
「そんな……まさか」
うわごとのような独り言を呟き、男は唐突にその場に膝を突いた。
「無礼をお許し下さい、国王陛下」
ヒカリには、男が何を言ったのかわからなかった。
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