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違う、と。どうしてバドルは否定してくれないのだろう。どうして、そんなことがある訳ないと言ってくれないのか。内側から嵐のような感情が込み上げてきて、ヒカリの肩は震えだしていた。
「……すまない」
ようやく聞こえたバドルの声に、ヒカリの中で何かが音を立てて崩れていった。浅い呼吸を繰り返しながら、目の前の男を凝視する。大切で、今のヒカリにとって唯一信頼できる存在だった筈なのに、真逆の感情がそれを侵食していく。怒りで視界が燃えていた。
「……を、……せよ」
「ヒカリ……」
「父さんを……返せよ」
バドルに掴み掛かり、激情のままに揺さぶった。呆然としていた兵士たちが正気づき、ヒカリを取り押さえる。
「赦さない。絶対に赦さないから……っ」
羽交い締めにされ、地面に引き倒されても、ヒカリは抵抗してバドルを睨み付けようとした。兵士に引きずられるように連行される間も、壊れたレコードのように何度も繰り返し、バドルへの恨みの言葉を叫び続けた。
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