第4話

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「ですが陛下、そのような真似は……。仮にも陛下に危害を加えようとした罪人です。陛下の御身にもしものことがあれば……」 「それなら拘束したままならよいだろう」 「しかし……」 「頼む。出してやってくれ」  懇願の言葉に、やがて「仰せのままに」と返事がして、二つの足音が近付いてくる。間を置かず目の前に現れたのは、牢の番人だろうか、森で会った兵士と似たような格好をした男と、見慣れぬ高貴な衣服を纏った、美しきこの国の王だ。皺ひとつなく、突き抜けるような清潔な白色をした長衣の上に、錦糸で縁取られた黒い羽織を重ね、頭にヘッドスカーフを巻いていた。  兵士が手にした鍵で牢の扉を開き、ヒカリに外へ出るよう促した。兵士は後ろ手に縛られたヒカリを掴む。 「怪我をしていないか?」  王が心配そうにヒカリを見つめる。ヒカリはその瞳をじっと見返したあと、ふいと視線を外した。口も開かなかった。王は短く息を 吐いたあと歩き出した。兵士がそれについて歩くので、否応なしにヒカリも従う形になる。
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