第4話

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 地上に上がり、どれだけ歩いただろう。以前にヒカリが侵入した際にも思ったことだが、宮殿内はとてつもなく広大で、迷路のようだった。外から見てもそう感じたのだ。建物の中はより複雑で入り組んでいた。  ヒカリが連れて行かれたのは、先程の地下牢とは打って変わった綺麗な部屋だ。ヒカリの自宅の面積が優に二つは入ってしまいそうな広々とした室内に、テーブルやソファなど美しい細工が施された調度品が置かれていた。 「下がってよい」  王に命じられた兵士は、一瞬戸惑った表情を浮かべたが、すぐに右手を胸に当て頭を下げ部屋から出ていった。  二人きりになった室内で、王はそっとヒカリに近付き肩を抱くと、部屋の奥にある大きな天蓋付きベッドの端へと座らせた。ヒカリは一切の抵抗をしなかった。捕らえられる際に暴れ回り、叫び続けたのが嘘のように。もう自分では扱えないところまで感情が振り切れて、何も感じなくなってしまったのかもしれない。
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