第4話

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  ◇  ◇  ◇  ◇  翌日になってヒカリは、両腕の拘束に加え猿轡をかまされた。それは声を封じる為ではなく、舌を噛んで自害しないようにするものだった。足は拘束されていなかったので、好きに部屋を歩き回ることは可能だった。けれど部屋に鍵を掛けられ、外に見張りがついている状態では、そこから出ることはできない。第一今のヒカリにはなんの気力も湧かず、自分に不似合いな豪奢なベッドの上で一日を過ごした。  また次の日になると、部屋に一人の男が居座るようになった。灰色の長衣を着た、五十近い年齢のその男は、ハーシウと名乗った。兵士ではなさそうだと思ったら、王の傍仕えだと短く説明した。  ハーシウがいる間は、猿轡が外され、両手の拘束は解かれないものの、体の手前で左右に距離が取れるように縛られた。また、部屋には大量の書物や果物が差し入れられたが、ヒカリはそのどれにも手をつけなかった。こんな好待遇の囚人があるものかと、心の中で乾いた笑いをした。
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