第4話

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 ベッドが揺れて、王が離れていく気配がした。部屋を出て行くのだろう。ヒカリは目を開け、音を立てないように体を起こし、その背を見送ろうとした。  その時、部屋の外で話し声がして、唐突に部屋の扉が開かれる。王と、部屋の隅に立っていたハーシウが、僅かに殺気立つのをヒカリは感じた。 「こんなところへ何用ですか、兄上」  王の声は心なしか硬いような気がした。 「いや、なに。お前が囚人に下にも置かない歓待ぶりをしていると聞いて、何事かと思ってな」  王の兄、この国の第一王子であり、外務大臣を務めるシャラフ・イッザ・ヒシャームは、顎に蓄えた髭をいじりながら、笑みを含んだ顔でヒカリを見た。年齢は二十九である筈だが、その髭の所為か少し更けて見えた。王はその視線からヒカリを庇うようにシャラフの前に立つ。 「なんでもお前を殺すと喚き散らしたそうだが、それを囲おうなど、本当にお前の考えることはわからん」  耳にべたりと纏わり付くような声で話しながら、シャラフは無意味に部屋をうろうろと歩き回った。
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