第4話

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「そういえば以前お前は妃候補の女たちを、宮殿から追い出したことがあったな」  シャラフは語尾を伸ばして含みを持たせる。王の肩がぴくりと反応を示した。 「人の趣味にとやかく口を出す気はないが、男を選ぶにしてももっと他にあるだろうに。そんな子供に構って何になるというのだ」  シャラフは呆れたように鼻で笑った。 「ああ、しかし珍しい毛色をしているな。アジア系か? 箸休め程度にはいいかもしれん」  そう言ってヒカリを一瞥すると、小馬鹿にしたような笑みを浮かべる。 「兄上」  王の声にはっきりとした怒りが宿っていた。 「私のことはどう仰ろうと構わない。しかし彼を侮辱することだけは、いくら兄上といえど聞き流す訳にはいきません」  怒気を帯びた王の顔つきに、シャラフはわざとらしく肩を竦めて見せた。 「おお、怖い。冗談だ、冗談」  その言葉にも王は表情を和らげなかった。 「貴重な逢瀬を邪魔してはいけないな。私は退散しよう」  シャラフは言いながら扉へと歩いていく。 「それではごゆるりとお過ごし下さい、国王陛下」  仰々しく礼をしてから、シャラフは部屋をあとにした。
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