第4話

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「昨夜は驚いただろう?」  必要時以外、一切口を開かなかったハーシウが唐突にヒカリに訊ねてきたのは、シャラフがこの部屋に現れた翌日のことだった。  いつものようにベッドの上に身を投げ出していたヒカリは、反射的に体を起こした。 「陛下とシャラフ様のことだ。周知の関係とは違っていただろう」  ヒカリは少し迷って、素直に頷いた。王となり国を統治する弟を支える兄。諍いなど無縁の二人の絆。それは国民の誇りであった。 「あまり外に知られたくない話ではあるが、既にお前は現場を見ているからな」  ハーシウの言葉はどこか言い訳めいていた。 「昔は本当に仲のよいご兄弟だったのだ。それが十代中頃を過ぎた辺りから、徐々に変化していった」  幼い頃から神童と呼ばれ、周囲の期待通りに成長した第二王子は、十五を越えた時には既に、ある程度の政治的存在感があり、充分な発言力を持っていた。 「シャラフ様も充分に勤勉で優秀なお方だった。しかし陛下はそれ以上に人を惹き付け、統率する能力がおありで、何より優れた先見の明をお持ちだった」  最初は小さな嫉みだった。それが年を追うごとに蓄積され、シャラフの心を歪めていった。
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