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「二年程前に先代の国王、お二人のお父上が病に倒れられ、長年国外におられたシャラフ様が戻られた」
長期に渡り実質的な距離もあった為か、その頃には目に見えて二人の間に溝ができていた。
「シャラフ様の態度が明確に変化したのはお父上が亡くなったあとだ」
あからさまに弟に敵意を向けるようになった。それは周りの者が眉をひそめる程顕著だった。
そこまで話すと、ハーシウは一度口を噤み、何かを探るようにヒカリをじっと見つめた。
「陛下が二十五歳になられてすぐのことだ。当時陛下には数人の妃候補がいらっしゃった」
その単語に、ヒカリは思わず顔をしかめた。そんな自分に気付いて、ハーシウから表情を隠すように顔を俯ける。
「しかしとある事件を切っ掛けに、すべての相手と関係を断ち切ってしまわれた」
ハーシウの眉間の皺が深くなる。
「一人の女が、あろうことか陛下の飲み物に毒を入れようと企てたのだ」
信じられない一言に、ヒカリは目を剥いた。
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