第4話

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「近しい者が自分の命を狙おうとした事実に、大変心をお痛めになっただろう。しかし自ら周囲を遠ざけられたのは、それが直接原因ではないように感じる」  どういうことだと視線で訴えるヒカリに、ハーシウは答えた。「国を守る為にそれが必要だと判断されたからだ」と。 「陛下は常に国と民のことを第一に考えておられる。それはお立場からくる責任感もあるが、ご自身の本質によるものが大きい」  褒め称えるようなその言葉は、不思議と憂いの響きを含んでいた。 「将来、この国を統治する責任と覚悟からか、まだ十にもならない時分からご自身を律しておられた。少しも世話役である私の手を煩わせてはくださらなかった」  ハーシウは寂しそうな顔で少し笑った。 「人の望みに応えるばかりで、ご自身を蔑ろにされ過ぎる。……いや、私たちが陛下をそうさせてしまったのかもしれない。寄せられる期待や信頼の分量だけ、あの方はご自分を殺さなければならなかったのだ」  絶対的な存在になればなる程に、高く遠い場所へ押しやられる。一人きりで。
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