第4話

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「だからお前がここへ来た時、私は陛下のご様子に大層驚いたのだ」  その声には喜びの感情が見え隠れしていた。 「あれ程に我を通される陛下を私はついぞ見たことがない」  ヒカリは辺りを見渡した。柔らかなベッド。毎日届けられる新鮮な果実や珍しい書物。すべて王の指図なのだろう。囚人であるヒカリがこんな扱いを受けるのは有り得ない。王が止めなければ、ヒカリはすぐにでも処罰される筈だ。  そんなこと、ヒカリは頼んだ覚えがない。罪滅ぼしだか機嫌取りだか知らないが、腹が立ってしょうがない。そう思うのに、体の奥からモヤモヤしたものが湧き出してきてそれを邪魔する。その不愉快さのまま、ヒカリは顔を俯けて歪めた。 「お前も思うところがあるだろうが、どうか今一度、あの方をきちんと正面から見てはくれないか?」  その言葉に、ヒカリはゆっくりと顔を上げた。ハーシウは一体どこまでヒカリの事情を知っているのだろう。幼少の頃、もしかすると生まれる前から王を知っていて、恐らくは心を閉ざした王が、心情を吐露できる数少ない存在。もしかすれば、王とヒカリの経緯もすべて把握しているのかもしれなかった。
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