第4話

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 ◇  ◇  ◇  ◇  その夜、ヒカリは王のことを考えていた。  ハーシウは、王を優しい男だと言った。だとしたら何故、あんな非道な命令をしたのか。身分を偽ってヒカリと関わったのか。それに初めて会った時、どうしてあんな格好で宮殿内の人気のない場所を歩いていたのだろう。用意周到に塀を飛び越える道具まで携えて。王であるなら、堂々と出入りしたところでなんの問題もない筈だ。そして王であることを隠すにしてもどうしてズィップの一員を名乗ったのか。謎はたくさんあった。  深夜を過ぎ、部屋にはヒカリ一人だけだった。照明は落とされ、代わりにベッドのすぐ傍に設置されたランプが、淡く周囲を照らしていた。  考えごとをしていたら、寝付けなくなってしまった。何度目かの寝返りを打った時、扉の向こうで微かに声がする。何事だろうと耳を済ませていると、この部屋のドアが開く音がして、ヒカリは竦み上がった。足音はゆっくりとベッドに近付いてくる。すぐ近くで人の気配がして、ヒカリは思わず飛び起きた。
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