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「すまない、起こしたか」
声の主は王だった。正体がわかり、ヒカリは安堵の息を吐いた。
「……ううん、起きてた」
安心して気が抜けたのか、ヒカリは反射的に返事をしてしまった。すると目の前の男は心底嬉しそうに笑って、「そうか」と答えた。
「こんな時間にすまない。今日は夜に様子を見にこれなかったから、せめて寝顔を眺めてから眠ろうと思ってな」
控え目の笑みに、きゅっと胸の奥が窄まるような感覚に襲われた。
「眠れぬか?」
申し訳なさそうに問われる。ヒカリは答えなかった。けれど物言わぬまま、王の顔を見つめた。
「少しだけ……、少しだけで構わない。話を聞いてくれないか」
悲痛にさえ聞こえる懇望にも、返答しなかった。僅かに顔をしかめ、ただ男を見つめ続けた。王がそれを了承だと受け取ったかどうかはわからない。しかし王は、そっとベッドの淵に腰を下ろして、ヒカリへと顔を向けた。
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