第4話

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「私が初めにヒカリに関わろうと決めたのは、あの夜に話した理由と相違ない」  言葉を選ぶように王は話し始めた。 「私の所為で家族を喪い、悲しみに暮れるお前に申し訳なさもあった」  ヒカリの体は無意識のうちに力んでいた。手首の紐が小さく軋んでヒカリはそれに気付く。 「復讐に協力する素振りで、どうにかヒカリを説得しようと思った」  気を抜けば再び怒りのまま叫び出しそうな予感がして、ヒカリはきつく目を瞑った。 「最初は一定の距離を置いて接することを心掛けていたのに、お前を見ていると優しくしてやりたくて我慢ができなくなってきた」  まるで自嘲するような溜息が漏れ聞こえた。 「すぐにまっすぐで優しい心を持ったヒカリに、私は……惹かれてしまった。そんな資格ありもしないのに。その言葉を口にすることさえ許されないことだ」  目を閉じていたから、王がどんな表情を浮かべていたかはわからない。だけどそれは、胸を揺さぶるような切ない響きだった。
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