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「どうして俺を助けてくれたんだ?」
「子供が泣きべそをかいているのを見たら、そりゃあ手を差し伸べたくなるだろう」
「泣いてないし、子供でもない!」
思わず叫ぶとバドルは声に出して笑った。
「ズィップの人間は人助けもするのか?」
悪者のくせに。そんな気持ちを言外ににおわせる。
「あのまま見捨てて置けばお前は捕らえられ処罰されていた。わかっていて素通りするのは寝覚めが悪いからな。それぐらいの良心はまだ持ち合わせているさ」
その言葉にヒカリは、助けてもらっておきながら素直に礼の一つも言っていない自分が、急激に申し訳なくなった。
「それにあそこでお前が捕まれば、今後警備が更に強化されるのは目に見えてる。こちらにとっても得策じゃないんでね」
謝罪と礼を伝えようとしいていたヒカリの口は、なんの音も発さないまま再び閉ざされる。結局は自分の為か。落胆のような気持ちが滲む。
「それで? お前はあんなところで何をしていた」
ヒカリは再びだんまりを決め込んだ。
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