第1話

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「どうして俺を助けてくれたんだ?」 「子供が泣きべそをかいているのを見たら、そりゃあ手を差し伸べたくなるだろう」 「泣いてないし、子供でもない!」  思わず叫ぶとバドルは声に出して笑った。 「ズィップの人間は人助けもするのか?」  悪者のくせに。そんな気持ちを言外ににおわせる。 「あのまま見捨てて置けばお前は捕らえられ処罰されていた。わかっていて素通りするのは寝覚めが悪いからな。それぐらいの良心はまだ持ち合わせているさ」  その言葉にヒカリは、助けてもらっておきながら素直に礼の一つも言っていない自分が、急激に申し訳なくなった。 「それにあそこでお前が捕まれば、今後警備が更に強化されるのは目に見えてる。こちらにとっても得策じゃないんでね」  謝罪と礼を伝えようとしいていたヒカリの口は、なんの音も発さないまま再び閉ざされる。結局は自分の為か。落胆のような気持ちが滲む。 「それで? お前はあんなところで何をしていた」  ヒカリは再びだんまりを決め込んだ。
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