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「ヒカリ」
どこか重い声で名を呼ばれて、ヒカリは思わず身構えた。
「今夜これから、お前を逃がす」
「……え?」
いくら王が絶対的な権力を持つこの国でも、法はある。それがなければ秩序を保つのは難しい。重罪人を黙って逃がせば、王といえど非難の対象になる筈だ。
「もっと早くにこうしてやるべきだったのだが、……すまない」
近付いてきた王は、言いながらヒカリの拘束を解いた。
「今夜、宮殿内は騒がしくなる。もし万が一のことが起こった時、ヒカリに何かあったのでは、己を恨んでも恨みきれぬ」
ヒカリには王が何を言っているのかわからなかった。わかるのはヒカリが宮殿を出れば、二度と会えないかもしれないということだ。
本来ならば会話することすら許されない雲の上の存在だ。
王はヒカリに身支度を整えさせると、誰にも見つからないように外へ出た。
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