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塀に沿って歩き、指示の通りに建物の角を曲がった時、ヒカリは息ごと動きを止めた。少し向こうに、複数の兵士の姿を見つけたからだ。今下手に動けば気付かれてしまいそうで、しばらくその場に留まりやり過ごすことにした。
「しかしシャラフ様、そんな事態を起こせば、国王陛下が黙っていらっしゃらないのでは?」
「ふん、あいつは決して私を責められない。兄弟の確執が民衆に知れれば一大事だからな」
その場にいたのは兵士数人と、王の兄であるシャラフだった。こんな人気のない場所で一体何をしているのか。
「現に先日砂漠で仕組んだ事件も、上手い具合にあいつが引っ被ってくれたではないか」
ヒカリは自分の耳を疑った。シャラフは今、なんと言った?
「まあ、騒ぎ立てる人間が少なかったのが計算外だったが。しかし立て続けに同様の事件が起これば民衆も黙ってはいないだろう」
考える前にヒカリの体は動いていた。
「今の、どういうことですか?」
突然目の前に飛び出してきたヒカリに、シャラフは面食らい、兵士たちは慌てて身構えた。
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