151人が本棚に入れています
本棚に追加
視界が赤く燃えていた。怒りのあまり肩も指先も戦慄いていた。
「だが同じことが何度も続けばどうかな。一部の非難の声は広がり、飛び火し、やがて民衆は国王に対して不信感を抱く」
シャラフはまるで詩を詠うように語る。
「しかしどんな手を使ったのか、ズィップの連中が使えなくなった。これはとんだ痛手だったが、こちら側に握りこんだ兵士を使えば事足りる」
「あなたは……この国の王族でしょう? どうしてそんな真似……」
訊ねる声が震えた。ヒカリにはシャラフの行動がまったく理解できなかった。
「こんな時代遅れの国など必要ない。この国の価値は豊富な資源のみ。それらをすべて吸収し、経済力を蓄えたカイサルで、私は高官として迎え入れられるのだ」
与えられた真実にヒカリは言葉を失った。本当にこれが、王と血を分けた兄弟なのだろうか。
「さて、訊きたいことは以上か? 冥土の土産としてはもう充分であろう」
シャラフは兵士の一人に目配せをした。一歩踏み出た兵士は、腰の剣を引き抜く。
「悪く思うな」
兵士は振り上げた腕をヒカリへと振り下ろした。
最初のコメントを投稿しよう!