151人が本棚に入れています
本棚に追加
「兄上。私は今まであなたの罪を飲み込むことが、父の遺志を汲むことだと思っていました」
王の声に苦さが混じる。
「だけどそれは思い違いだった。本当はもっと早くあなたの罪を問い質し、咎めなければならなかった」
王の背中からは後悔がありありと滲んでいた。
「罪ではなく、それで生じる辛さや苦さを飲み込んで生きてゆくことが、あなたと血を分けた私のすべきことです」
王の言葉に、シャラフは視線を俯けた。
「お連れしろ」
王は静かに告げた。シャラフは力尽きたように項垂れている。それは諦めの態度に見えた。しかし次の瞬間、シャラフは腰に下げていた宝飾が施された短剣の柄に手を掛け、王へと突進する。ヒカリに意識を向けようとしていた王は、それに気付くのに一瞬遅れた。シャラフの行動にいち早く反応したのはヒカリだった。
最初のコメントを投稿しよう!