第1話

8/17

151人が本棚に入れています
本棚に追加
/95ページ
「ま、言いたくなければ別に構わん」  バドルは半ば呆れたように言ったあと、「だが一つだけ」と続けた。 「何が目的か知らないが、あんな場所に忍び込むなんぞ命知らずも甚だしい。今日無事だったことも奇跡と思った方がいい」  諭すようなバドルの眼差しに反発するように、ヒカリは相手を強く見返した。 「でも、あんたは何度も侵入してるんだろ?」  暗くて広大な敷地を迷うことなく進んでいた。 「まあな。捕まるようなドジは踏まん。この中にしっかりと王宮の情報が入ってるからな」  バドルは言いながら、人差し指でこめかみの辺りを突いた。 「それ、本当か?」  バドルの言葉にヒカリは目の色を変えた。 「おっと。情報なら売らないぞ」  口に出す前に先回りされた答えに、ヒカリは顔をしかめる。その様子にバルドは溜息を吐いた。 「それじゃあ訊くが、お前はそれを知って一体何をしでかすつもりだ? 盗賊デビューするつもりなら、もう少し容易な初心者コースを教えてやらんこともないが」  からかわれている。ヒカリは失意に肩を落とした。
/95ページ

最初のコメントを投稿しよう!

151人が本棚に入れています
本棚に追加