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「無事か、ヒカリ」
必死の形相で、ヒカリの顔を覗き込む。
「平気、ちょっと掠っただけだから」
王は出血したヒカリの左腕を取ると、苦渋に満ちた表情を浮かべた。
「すまない。ヒカリを危険な目に遭わせた」
「大丈夫だよ。助けてくれてありがとう」
「助けてもらったのは私の方だ」
その形を確かめるように、王はヒカリの頬に手を添え、じっと見つめる。
「無茶をするな。……心臓が止まるかと思った」
深く長い安堵の息に、ヒカリの胸がずきりと痛んだ。王の瞳や声色から心からの心配を感じて、ヒカリは小さく、「ごめん」と謝罪をした。
「でもどうしてこの場所に?」
「ここ数日、兄にきな臭い動きが見られていた。また何か取り返しのつかないことを実行するつもりだと察知して、今夜、過去の罪を明るみにして捕らえるつもりだったのだ」
今日宮殿内の雰囲気がいつもと違った理由が、ヒカリにもようやくわかった。
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