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「どうして、俺に言わなかったの? 父さんを殺したのはバドルじゃないって」
兄弟の確執を民衆に隠していたかったのはヒカリにもわかった。けれど黙っておいてくれと言われれば、ヒカリは絶対に口外したりしなかったのに。その問いに、バドルは少し躊躇ってから答えた。
「私の罪であることには変わりないからだ。私が最初からきちんと兄と向き合っていれば防げた筈だ」
本当にすまない、と後悔を滲ませた声で謝罪をされる。
どこまでまっすぐで誠実な人なのだろう。ヒカリはそれを噛み締めるようにバドルを見つめた。するとすぐに我慢できなくなって、その胸に飛び込んでいた。
「ヒカリ」
バドルはそれを優しく抱き留める。
「バドルは……自分一人だけで抱え込んでばかりだ」
王という役割も、重圧も、想像はできてもヒカリでは到底わかりえないだろう。
「俺はまだ子供で、弱くてちっぽけで、なんの役にも立たない」
「ヒカリ?」
バドルはそっとヒカリを引き離し、顔を覗き込んでくる。
「でも……バドルの傍にいることはできる」
青い瞳が驚いたように丸くなった。
「えっと、……その、自惚れてる訳じゃないんだ。もしもの話。もしバドルがちょっとでも俺を必要なら……」
言葉の途中で、ヒカリは再びバドルの胸の中に収まる。息もできないくらいに、バドルに強く抱き締められた。
「必要だ……。私はどうしてもお前が欲しいんだ。傍にいてくれ」
バドルは必死の願いを口にする。胸に広がる温かい気持ちを噛み締めながら、ヒカリはバドルの背に腕を回して頷いた。
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