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ハーシウが淹れてくれたコーヒーを飲んでいると、バドルは慌てた様子で部屋に戻ってきた。それを見たハーシウは「童子のようですぞ」とからかってから、部屋を辞去した。
「仕事はもう大丈夫なの?」
「ああ、今日のところはな。また明日からが大変だが」
確かな覚悟と僅かな憂いを、ヒカリはその表情から感じ取る。励ますようにそっとバドルの手を撫でる。するとバドルは笑顔を浮かべて、ヒカリの頬に音を立てて口付けた。その部分が一気に火照って、ヒカリは手のひらで押さえた。
「あの、ここってバドルの部屋だよね。俺なんかが入っていいのかな」
恐らくはこの建物中で一番豪奢であろう王の部屋を、ヒカリは再度見渡した。
「俺ってその……囚人だったし」
もしかしたらそれは現在進行形なのかもしれないし、脱走途中で舞い戻ってきたのだから事態は悪化しているのかもしれない。
「そうか……そうだな」
不安そうな表情を浮かべるヒカリの前にしゃがみ込み、バドルは何かを思案するように呟いた。
「それじゃあ刑罰を与えよう。ヒカリはずっとこの部屋に軟禁だ。私の傍を離れることは決して許さない」
一瞬にしてヒカリの顔が真っ赤に染まる。バドルは笑んで、ソファに座るヒカリの体を横に抱き上げて歩き出した。
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