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「あ。電話」
傍らに置かれていた岸野のスマホが
通知音を立てた。
「綾ちゃんからだ‥‥もしもし」
岸野がスマホを取り上げ、話し始めた。
「あ、うん‥‥今、川瀬んち。え?
大丈夫、寝てないから‥あ、明日?
別にいいけど。じゃあ、j駅に10時に。
あ、待って?もう今日じゃん。はーい、
またね」
「寝てないからって、嘘じゃん」
岸野を小突くと、岸野はぎこちなく笑った。
「だって、綾ちゃん怖くて」
「彼氏の威厳が全くないな、岸野」
それでもうまくいっているんだなと
寂しさを感じながらそう言うと、
岸野は首を傾げ、こう答えた。
「誰が、彼氏?」
「ん?」
話が噛み合ってない。まだ寝ぼけてるのか。
俺は苦笑いし、今言ったことを繰り返した。
「だから、彼氏の威厳が神代綾には通じない
なって言ったの。岸野、彼氏だろ?」
「だから、誰の」
岸野のキョトンとした表情に、
俺は笑いを堪えられなくなった。
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