第二章 初恋の味を知らないモガとモボ

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 現在の長命子(ながこ)は女中長として鷹小路邸の家事一切を任されている。運転免許も「美琴様の外出の送り迎えをしたい」と鷹麿に希望を出して取得したもの。鷹麿は運転免許は良妻賢母には必要ないと考えており「女が免許なんて! 寝ぼけたことを言うなら里に帰るか?」と脅しをかけたのだが、雲雀子と美琴のたっての願いで長命子(ながこ)の免許取得が許されたのであった。  笑顔で何かを語り合いながら歌舞伎座の玄関へと向かう美琴と未早矢。フォードの運転席よりその光景を見る長命子(ながこ)の表情は嫉妬に狂った般若そのものであった。 長命子(ながこ)は幼き頃からずっと美琴と一緒にいて、今の今迄想い続けてきた身。 その美琴がいきなり鳶に油揚げをさらわれるように持っていかれればこうなるのも当然である。しかし、女中と華族との間では叶わぬ恋にして夢であることも事実であるために「これで良かった」と思う気持ちも芽生えてしまう。 長命子(ながこ)は屋敷に帰ったら蓄音機(レコオド)で慰める曲でも聞こうと考えながら鷹小路邸へと戻って行くのであった。
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