ラーメン

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
 ラーメン屋で男はどんぶりに箸を入れた。麺をすくいあげた。 「いたた! 何すんのよ!」  どんぶりの表面が顔の形になった。 「何って、食べようとしているんだよ」男はいった。 「何ですって? あなた私を食べるつもり?」 「だって君はラーメンだろう。ラーメンは食べ物だよ」 「鬼! 悪魔! 人でなし!」 「いやいや、ラーメン屋でラーメンを食べて何が悪いんだよ」 「なぜ? なぜそんなに私を食べたいの?」 「腹が減っているからだ」 「それだけ? それだけならラーメンでなくてもよいじゃない」 「俺はラーメンが好きなんだ」  彼女の瞳から涙がこぼれ落ちた。 「すまない。でも俺は君を食べるしかないんだ。なぜなら」 「なぜなら?」 「麺がのびてしまうから……」 「あなたは何もわかっていないわ!」 「何がわかっていないっていうんだ!」 「私はタンメンよ」
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!