第三十ニ章 Hide and seek 二

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「そして、街の場が封じられたら、今度は山の場を切り離す」  だから、鬼達には人の界に残るか、鬼の場に戻るか、選択し移動する時間を与える。  竜は界を渡るが、鬼が渡れるとは思えない。だから、簡単な気持ちで、選択しないで欲しい。 「匠深は…………」 「匠深は、人の界では見えていない。それは鬼の場に存在する、面だからだ」  つまりは、匠深は鬼の場でしか存在できない。 「でも、匠深は大学生ですよ。試験も受けて、合格している、友人もいる」 「でも、匠深の姿は見えていなかった。人の脳にも補正機能があって、見えていなくても、そこに存在していると認めれば、誰かいると認識できる」  人も界も、補正機能があるのだ。 「…………水瀬には見えていただろう?」 「俺は鬼よりも厄介な生き物だ。それに、界を渡る事が出来るので、ズレを認識し、調整する事が出来る」  ここで、月森が鬼の場の解説をしてくれたが、つまりは、俺という竜王がこの界に来た事で、パワーバランスが崩れたのだという。そして、面は匠深を呼んで蘇り、場は界へと進化していった。 「俺のせい?」 「竜王は、この界の主なのですよ。主のいなかった界に、竜王がきて、その世界を決定したというのか…………定まっていなかった、未来が出来たというのか…………」  俺は生きる事を食としていた。だから、精で生きる鬼が除外されてしまった。  すると、鬼達には悪い事をしてしまった。  鬼は、隠れて静かに生きたかっただけかもしれない。 「でも、このまま放置していれば、人はやがて滅びていた」 「え???」  寄生されているというのは、時として宿主を食い殺す事があるらしい。 「方法は、改めて考えるとして、街の場を封じるのは先ですね」  どうも月森は、俺が鬼に追い掛けられるという事が気に入らないらしい。 「でも、考える前に少し眠りたい」  本来は、竜はそんなに眠らなくてもいいのだが、今は満腹過ぎて動けない。それは月森や安在も同じらしく、大きな欠伸をしていた。 「そうですね、少し眠りましょう」  俺は満腹だったが、おにぎりを食べてしまった。この、精で満腹というのは、どこかが異なる。そして、眠ろうと思い布団を出したが、人数分は無かった。そこで、車から寝袋を獲ってきて、廊下で眠る事にした。
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