第三十章 悲しみの鬼 五

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 境内にはベンチがあったので、俺がそこに座って村を見ていると、遠くから声が聞こえてきた。そして、その声はそのまま近付いてきて、同じベンチに座ろうとした。  だが、ベンチは既に一杯になっていたので、迷わずに俺を持ち上げ、自分が座ると膝に乗せた。 「金太郎さん」 「今日は人数が増えたけれど、このお兄さん達は、竜だな…………それも、このチビ助とは比べ物にならない古竜」  チビ助とは誰の事だろう。 「古竜には、まだ分類されませんよ。若造でもありませんが…………」  月森は真面目に答えてから、金太郎を見ていた。そして、安在は金太郎と睨み合っていた。 「あ、こっちは、味見の出来ない天才料理人?」  どうも、安在の事は、料理長から聞いていたらしい。 「今は、味見が出来ます。そこのチビ助のおかげです」  やはり、俺の事をチビ助と言っているのか。
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