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第三十一章 Hide and seek
金太郎は、昨日、森を案内する前に、俺達が消えてしまったと言っていた。そこで、改めて森の案内をお願いした。
「神社がエロの場というのは、よく分かりましたので、今日は森をお願いします」
「いいの?見ておかなくて…………最奥の間は、物凄いエロだよ…………それに、この鬼の場が始まった場所だ」
そこには匠深がいそうなので、見たくないのだ。それに兄である朽木にも、見せたくない。
「まあ、説明が面倒なので、少しだけ奥を見せておく」
「行きません」
鬼の場を作った鬼は、洞窟の滝の前で、人と愛し合い、平和と永遠を願ったらしい。そして、毎日、愛し合い、そこに場が出来た。
もうその説明で分かったので、洞窟の中に入らなくてもいいだろう。
俺が森に向かおうとすると、金太郎が俺の腕を掴んだ。
「だから………………行きません」
「つべこべ言わない!」
金太郎は俺を担ぐと、洞窟に向かって歩きだしていた。
「あ、金太郎様だ」
「珍しい、先生と一緒じゃない」
金太郎は、どこにいても目立つ存在で、人の視線を集める。それに、凄い人気だ。
「鬼同士で愛し合えばいいのに…………」
「鬼同士では、精の取り込みが出来ない」
しかし、皆、金太郎に焦がれている。それは、この暗闇の世界の、光だからかもしれない。
「それに、そんな事をしたら、雌に殺される」
鬼の場にも、ルールがあるらしい。
「金太郎、どうして俺達に構う?先生を助けたいという気持ちは教えて貰ったけれど……それだけ?」
「放っておいたら、戦争になりそうだからだ」
それは、鬼と竜の戦争だろうか。だが、金太郎は、鬼は争い好まなかったので、場に閉じ籠ったと言っていた。だが、一つ例外があり、伴侶については奪い合いになるらしい。
「…………特に、鬼は異種を好む性質がある。色々な能力を取り込みたいという要求があるのかもしれないな…………」
だから、金太郎が好まれる。金太郎は、鬼においては天に属する、珍しい者なのだ。
「竜は珍しい上に、とても美しい」
だから、伴侶としての奪い合いが発生するという。
だが、鬼の美的センスを考えると、美しいというものが、何なのか分からない。きっと、鬼から見たら、ゴリラも美人だろう。
「さてと、ここから洞窟」
「皆、見ているね…………」
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