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「俺は太陽を持ってきた。だから、この場は、夜になると明るくなる」
不思議な現象だが、金太郎の光は昼間には暗くなるらしい。だから、鬼は夜になると活動を始める。
「あの、そろそろ降ろしてください。自分で歩きます」
俺は金太郎に担がれたままだった。
「そうか、軽いから持っていても構わないぞ」
しかし、自分の足で地面を確認したい。
そして洞窟を歩き始めると、幾つもの分岐があった。
「分岐ですね……」
「こっちだ」
踏み慣らされた道を選んでいれば、迷子にはならないという。だが、直ぐに行き止まりになっていた。そして、戻って別の道に行ったが、そこも塞がっていた。
「迷子になっているでしょう??分かり難い!!」
「水音がするだろう?そっちに向かえばいいだけだ」
音は反響するので、道を間違えるのだ。しかも、今度は間違えた先が、切り立った鍾乳洞のようになっていた。これは、落ちたら大怪我になりそうだ。
「危ないので、迷子になりそうな道は塞ぎましょう」
大体が行き止まりになっているので、さほど問題ではないらしい。しかし、行き止まりではない道もあるので、慣れていないと危険過ぎる。
「水音どこだ!」
「立哉は水竜だろう。それでも、間違えるのか?」
立哉はそもそも飛んでいるので、落ちる恐怖を知らない。それに、洞窟全体が水の気に満ちていた。
「立哉、水はどっち?」
でも、立哉を頼って先を急ごう。
そして、水音に近付いてゆくと、急坂の先が崖のように落ちていた。
「暗かったら、ここも、危険ですよ!」
「だから、明るくしただろう!」
だが、明るくしただけでなく、崖があると言って欲しかった。
「滝になっているのですか…………」
水音が響いているのは、滝のように落ちているせいだ。そして、金太郎を捕まえ、光をむしり取って照らすと、かなり高い場所から水が落ちていた。
「光をむしり取った奴は初めてだ…………この光、掴める奴がいたのか…………」
光は掴める。
「光、滝を天井から照らしてください」
「光は生き物ではない」
しかし、光は飛んでゆき、滝の上部を照らしてくれた。
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