第三十一章 Hide and seek

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「水瀬の命令はきくのか??それに…………光は言葉が通じたのか…………」  金太郎も、光を操っているが、それは物として動かしているだけらしい。 「水は山に繋がっているのか…………」  この水は、山から流れてきている湧き水を根源としていた。だから、界として別れた時に、枯れてしまう恐れがある。  この水が、鬼の場の水源だとすると、絶って大丈夫なのか、少し気になる。 「水の鬼はいますね?」 「そこにいるよ」  そこと言われて下を見ると、滝つぼの付近に、抱き合っている鬼がいた。 「………………………………」 「ここが、最奥の部屋とも呼ばれていて、入れる鬼は数人しかいない。それと…………」  姿を見ると、それが誰なのか分かってきた。 「匠深ですね」  水鬼と抱き合っていたのは匠深で、膝に抱えられて、上下していた。その上下というのが、遠目でも分かるピストン運動であった。 「………………あはああん、ああああん!」  そして、姿が確認できてしまうと、声まで聞き取れてしまった。  これは匠深の声で、鬼に差し抜かれて喘いでいた。  俺がそっと朽木を見ると、朽木は思った以上に冷静で、この場の様子などを確認し、鬼の場所を見た。 「やっぱり、俺には匠深が見えない…………」  そして、匠深の声も聞こえていなかった。  朽木の事を心配していたが、匠深の事は、ここでも見えないと分かった。 「はああああああ!!!!!ああああああんんんん!!!!ひいいいんん」  匠深は髪を振り見出し、滝の上を見て大きく口を開いていた。そして、顔を歪めて喘いでいる。その口からは、大量の泡を吹き出し、時々、ごぼごぼと咳をする。そして、泡を吹き出すと、再び喘ぐ。 「水の気が強いのか…………」  だから、溺れそうになってしまうのだろう。それに、この場にも問題がある。 「精を水に変えている?」 「水鬼だからな」  水鬼が、精を水に変える事が出来るのならば、少し安心する。少なくとも、生きられる量の水は確保できそうだ。 「でもな、精を水に変えるのは、ここだから出来る事だ」  これだけの密度の精が無いと、水に変える事は出来ないらしい。 「それと、水鬼は、匠深を愛している。でも、匠深は分かっていない」 「匠深は、鬼は義務で抱いていると思っていますからね」  匠深の舌が暗闇に長く伸び、鬼の舌と絡まり、深くキスをする。その間も腰は揺れ、どこからかブチュブチュというような、滝とは違う水音が木霊してきた。 「あっはん、はあああんん!!」  そして、キスが終わると、再びバンバンバンという、叩きつける音が響き始める。 「はうはうはう!!」  匠深は、泡を吹きながら、涙も流し、鼻水も垂れ流していた。だが、恍惚としていて、他には何もない虚無の表情にも近かった。
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