第三十一章 Hide and seek

7/8
56人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
「彼は、匠深を真剣に愛しています。だから、伴侶となって、共に暮らしたいと申し出ている」 「鬼にとって、伴侶というのは特別なのですね?」  金太郎は、でも匠深はこの神社から出る事を許されておらず、誰の伴侶にもなれないのだと説明してくれた。 「匠深は、何と言っているのですか?」 「匠深君は、この洞窟を棲家にしたいと言っている。ただ、それだけ…………」  だから、ここで洗濯しているのだろうか。  しかし、ここは、余り住み易い環境ではない。 「…………恋愛には障害がつきものだ」 「でも、障害があるほどに、燃え上がる」  匠深が選んだ相手ならば、鬼であっても応援したい。 「…………しかし、あれは、気持ちいいものなのか?体格に差があり過ぎる」  匠深はそれなりに男なのだが、鬼は大きく筋肉質で、匠深の二倍は大きかった。だから、比較して匠深が華奢で、小さく見える。  更に鬼が匠深の腰を掴んでいて、その片手で腰が掴めてしまいそうだった。だから、匠深が華奢に見えてしまうのだが、実際は鬼が大きいのだ。 「つまりは、あんなにデカいものをブチ込まれて、気持ちいいのか不思議だという事か?」 「身も蓋もない言い方だな…………でも、まあ、そうだ」  この場が特殊だとしても、俺は絶対にあんなモノを入れられたくない。 「でも、この場でしているから、匠深は毎晩で止まっているのかもしれない」  鬼の伴侶になった人は、抱かれ続けて消えてゆく。 「先生をここで抱いてみたら?試してみる価値はあるかも」 「そうだな…………」  金太郎は、朽木の意見に考え込み、顎に手を当てていた。 「それと、鬼殿は人としても生活できる。鬼の雄でも、伴侶になれると思う」  だが、鬼のルールでは、鬼の雄同士の性交は禁じられているらしい。 「人がいなくなったら、そうも言っていられないでしょう?」 「ここに、人の村も作ればいい」  そう簡単に、鬼の場に人の村は作れない。  でも、金太郎は鬼だ。そして、鬼の場というものの存在が分かってきた。 「隠れ鬼………………」  鬼は、どこにでも隠れている。でも、鬼を捕まえる事ができない。それは、人よりも鬼の方が強いからだ。 「そうか、隠れ鬼を終りに出来るのは、人ではない」  鬼殿は人の姿をしながら鬼の能力を持つ。だから、人は憧れ、鬼殿になろうと追いかける。でも、そこには大きな誤りがある。鬼殿は、最初から人ではない。  人が鬼になろうとして追い掛けた先に、この場がある。そこで、鬼の伴侶となり、力を得ると、今度は人の元に帰れなくなる。  それが場の補正だ。  結局、人と鬼は、同じ場所に存在してはいけないものなのだ。 「鬼の場を、界にします」 「それが、最善だな……」  それが界の希望であり、竜王である俺が出した結論だ。 「この始まりの場の先は、境界だ。だから、切り離しても精は湧き出る。それに、水も流れる」  ここは、始祖のメンバーが示した道筋だ。鬼は様々なモノに成れる。そうやって、生き抜けと伝えたのだ。これは、竜界の伝承にも同じものが存在する。 「でも、森も見ていこう」 「そうだな」
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!