56人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
「彼は、匠深を真剣に愛しています。だから、伴侶となって、共に暮らしたいと申し出ている」
「鬼にとって、伴侶というのは特別なのですね?」
金太郎は、でも匠深はこの神社から出る事を許されておらず、誰の伴侶にもなれないのだと説明してくれた。
「匠深は、何と言っているのですか?」
「匠深君は、この洞窟を棲家にしたいと言っている。ただ、それだけ…………」
だから、ここで洗濯しているのだろうか。
しかし、ここは、余り住み易い環境ではない。
「…………恋愛には障害がつきものだ」
「でも、障害があるほどに、燃え上がる」
匠深が選んだ相手ならば、鬼であっても応援したい。
「…………しかし、あれは、気持ちいいものなのか?体格に差があり過ぎる」
匠深はそれなりに男なのだが、鬼は大きく筋肉質で、匠深の二倍は大きかった。だから、比較して匠深が華奢で、小さく見える。
更に鬼が匠深の腰を掴んでいて、その片手で腰が掴めてしまいそうだった。だから、匠深が華奢に見えてしまうのだが、実際は鬼が大きいのだ。
「つまりは、あんなにデカいものをブチ込まれて、気持ちいいのか不思議だという事か?」
「身も蓋もない言い方だな…………でも、まあ、そうだ」
この場が特殊だとしても、俺は絶対にあんなモノを入れられたくない。
「でも、この場でしているから、匠深は毎晩で止まっているのかもしれない」
鬼の伴侶になった人は、抱かれ続けて消えてゆく。
「先生をここで抱いてみたら?試してみる価値はあるかも」
「そうだな…………」
金太郎は、朽木の意見に考え込み、顎に手を当てていた。
「それと、鬼殿は人としても生活できる。鬼の雄でも、伴侶になれると思う」
だが、鬼のルールでは、鬼の雄同士の性交は禁じられているらしい。
「人がいなくなったら、そうも言っていられないでしょう?」
「ここに、人の村も作ればいい」
そう簡単に、鬼の場に人の村は作れない。
でも、金太郎は鬼だ。そして、鬼の場というものの存在が分かってきた。
「隠れ鬼………………」
鬼は、どこにでも隠れている。でも、鬼を捕まえる事ができない。それは、人よりも鬼の方が強いからだ。
「そうか、隠れ鬼を終りに出来るのは、人ではない」
鬼殿は人の姿をしながら鬼の能力を持つ。だから、人は憧れ、鬼殿になろうと追いかける。でも、そこには大きな誤りがある。鬼殿は、最初から人ではない。
人が鬼になろうとして追い掛けた先に、この場がある。そこで、鬼の伴侶となり、力を得ると、今度は人の元に帰れなくなる。
それが場の補正だ。
結局、人と鬼は、同じ場所に存在してはいけないものなのだ。
「鬼の場を、界にします」
「それが、最善だな……」
それが界の希望であり、竜王である俺が出した結論だ。
「この始まりの場の先は、境界だ。だから、切り離しても精は湧き出る。それに、水も流れる」
ここは、始祖のメンバーが示した道筋だ。鬼は様々なモノに成れる。そうやって、生き抜けと伝えたのだ。これは、竜界の伝承にも同じものが存在する。
「でも、森も見ていこう」
「そうだな」
最初のコメントを投稿しよう!