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「いいのですか!ありがとうございます!」
「私も、喜んでもらえて、嬉しいな」
これは、とても嬉しい。しかも、山菜だけでも幾種類もの佃煮があり、更にキノコ類のものもある。山椒も佃煮など、味の想像も出来ない。
「炊き込みご飯は、道中で食べてね。佐久弥は、食欲魔人だから、取られないようにね」
「はい!」
朽木は、ご飯を狙っているが、絶対に取られないようにしよう。
そして乃葉菜は、深く頭を下げてから俺を見た。
「どうか、佐久弥をよろしくお願いします」
「お世話なんてしていません!」
すると乃葉菜は、朽木がかなり変わったと言っていた。
「佐久弥は、どこか悟っていて、どうでもいいと、斜めから世間を見ているような子でした。それが、今回は、きちんと未来を見ていた。多分、水瀬さんに会ったからです」
俺は何もしていない。
「…………匠深が見えなくなって、我が家は緊張の連続でした……その前も、匠深は病気がちで……私は病院と旅館で精一杯で、他の子どもの面倒まで手が回らなかった」
朽木や幸助は、ハンザや目羅も加わり、賑やかにやっていたようだ。だから、乃葉菜が恐縮するような事ではない。
「佐久弥は、ああ見えてバカな子で…………」
「そこは、よく知っています」
朽木は何でも出来るように見えるが、かなり抜けている。
「いい人を見つけてくれたと思います」
「友人です」
どうも噛み合わない会話だが、乃葉菜の気持ちはよく分かった。
「そして、匠深も最愛の人を見つけていたのですね…………」
それは、人ではなく鬼で、しかも最愛なのかは確認していない。でも、匠深は自分の居場所を見つけていた。
俺の母親も、俺が最愛の人を見つけたと言ったら、喜んでくれるだろうか。
「又、遊びに来てね。今度は、旅館に宿泊して欲しいのよ。女将として接待したいの!」
「予約します!」
乃葉菜の笑顔は、陽子に通じるものがある。今度は、洋平と陽子も連れて、ついでに満里子も一緒に、ここに宿泊したい。
「では、荷物を纏めたら帰ります。お世話になりました」
「はい、元気でね」
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