第三十ニ章 Hide and seek 二

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 乃葉菜に挨拶すると、俺は佃煮とおにぎりを車に乗せた。そして、食事の片付けをすると、車に乗り込んだ。 「月森さん、安在さん、乗って帰りますか?」 「そうする」  竜になって飛んできたのだが、鬼の場に行ったので、かなり疲れてしまったようだ。月森と安在は、後部座席で眠ると言い、しきりに謝っていた。俺としては、来てくれただけでも心強かったので、今はゆっくり休んで欲しい。 「立哉はどうする?」 「仕事があるので、先に飛んで帰ります」  立哉が先に帰るというので、俺はハグすると礼を言っておいた。すると、礼よりも、やはり一緒に住みたいと言ってきた。 「佳樹と一緒にいると、とても、安らぎます」 「それは俺も同じだけど、俺達はもう大人だ…………多分。だから、もう、独り立ちしよう」  竜として大人なのかは怪しいが、互いに距離を取っておこう。そして、一人前になってから、又、今後の事を考えるのもいい。俺と立哉は、最強の竜とその宝珠で、その関係は変わらないのだ。 「俺は、立哉の宝珠。それは、絶対だから…………」 「…………」  立哉も言いたい事があるようだが、今は静かにしていた。そして、空へと飛び立った。 「いいなあ、飛べるのは…………」 「俺も飛べるよ」  だが、赤とんぼの大きさで、徒歩よりも遅い。 「さてと、帰るか……」  そして、車を走らせてから、朽木の父親に会っていなかった事に気付いた。 「朽木の父親に挨拶していなかった!」 「親父か?どこにいたのだろう…………」  どうも、朽木にとって父親は、存在の薄い人らしい。 「朽木…………自分の父親だろう」 「そうは言っても、普段でも余り会わない人だった。実家から中学や高校は通っていたけれど、朝食にも、夕食にも顔を出さない人というのか…………居ても気付かない人というのか…………他の家族がうるさかったというのもあるけど…………」  朽木の家は旅館で、揃って食事をするという事も少なかったようだ。そして、目羅兄弟やハンザの兄弟や妹、両備などと食事をしていたという。
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