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乃葉菜に挨拶すると、俺は佃煮とおにぎりを車に乗せた。そして、食事の片付けをすると、車に乗り込んだ。
「月森さん、安在さん、乗って帰りますか?」
「そうする」
竜になって飛んできたのだが、鬼の場に行ったので、かなり疲れてしまったようだ。月森と安在は、後部座席で眠ると言い、しきりに謝っていた。俺としては、来てくれただけでも心強かったので、今はゆっくり休んで欲しい。
「立哉はどうする?」
「仕事があるので、先に飛んで帰ります」
立哉が先に帰るというので、俺はハグすると礼を言っておいた。すると、礼よりも、やはり一緒に住みたいと言ってきた。
「佳樹と一緒にいると、とても、安らぎます」
「それは俺も同じだけど、俺達はもう大人だ…………多分。だから、もう、独り立ちしよう」
竜として大人なのかは怪しいが、互いに距離を取っておこう。そして、一人前になってから、又、今後の事を考えるのもいい。俺と立哉は、最強の竜とその宝珠で、その関係は変わらないのだ。
「俺は、立哉の宝珠。それは、絶対だから…………」
「…………」
立哉も言いたい事があるようだが、今は静かにしていた。そして、空へと飛び立った。
「いいなあ、飛べるのは…………」
「俺も飛べるよ」
だが、赤とんぼの大きさで、徒歩よりも遅い。
「さてと、帰るか……」
そして、車を走らせてから、朽木の父親に会っていなかった事に気付いた。
「朽木の父親に挨拶していなかった!」
「親父か?どこにいたのだろう…………」
どうも、朽木にとって父親は、存在の薄い人らしい。
「朽木…………自分の父親だろう」
「そうは言っても、普段でも余り会わない人だった。実家から中学や高校は通っていたけれど、朝食にも、夕食にも顔を出さない人というのか…………居ても気付かない人というのか…………他の家族がうるさかったというのもあるけど…………」
朽木の家は旅館で、揃って食事をするという事も少なかったようだ。そして、目羅兄弟やハンザの兄弟や妹、両備などと食事をしていたという。
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