第三十章 悲しみの鬼 五

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 精霊に近く、自然からエネルギーを貰っている竜もいるが、竜界の竜は、むしろ世界に近い。だから、生き物から搾取している鬼とは、真逆の存在に近い。 「朽木はいいね。食物などからエネルギーを得ている。鬼も本来、そうあるべきだ」  だが鬼にとっては、食べる事も、精を搾取する事も同じだという。  主な違いは、自分でエネルギーを作り出すか、人から奪うかの違いなのだが、それを教えるのは難しい。 「ここで、人も精を貰うと、もう元の界には戻れないといいます」 「そうかもな……楽を知ってしまうと、臓器は退化する。人の未来は、退化の先ではなく、苦難の末の新機能が良い」  しかし、鬼の場は切り離し易いが、住んでいる鬼が少ないので、単独の界として存在出来るかが問題だった。 「界として独立する時、界は補正をかける。それが、問題」  界は生き物に近い。だから、生きられるように、自分を組み替える。 「自分が生きられるように、界が補正するわけですね」 「どうやったら、生きられると思う?」  界が生き物だとすると、食糧を確保するかと思う。 「人を確保しておく」 「もしくは、人を連れ去る事が出来る、機能を持ち続ける事だな」  それでは、鬼の場を切り離しても、人を攫い続けてしまう。 「そこで、精を吸い上げる事を許す」 「…………そうですね」  それで、人が攫われないのならば、妥協しておこう。 「鬼を殺したいわけではない」 「…………良かった」  鬼と生きられなかったが、それでも殺したいわけではない。だから、鬼が生きられる方法を探してゆこう。 「しかし、凄いな。本当にラブホだ」 「凄いですよ。鬼の夜伽」  すると、中を覗いてきた安在が、顔を青くしていた。竜の性交も半端ないが、鬼は食事としてやっているので、別の意味を持つ。そして、料理を担当している安在は、あの食事が受け入れ難いようだ。 「あの食事はないな……」 「そうですね。俺も嫌です」  鬼を否定するわけではないが、あの食事は嫌だ。 「でも、食事以外は普通の田舎ですよ……」
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