10人が本棚に入れています
本棚に追加
今度はどこにいるんだろうかと、顔を上げる。
時計の針たちは協力して午後十七時半を示していて、部活終わりの二人の笑い合う声が聞こえてきた。下校前の生徒用玄関、
ここの下駄箱はいつも不安定。
「あっ、先輩気を付けてください…そこの下駄箱、不安定なことで有名なんですから」
「ほんとだわ……新しくならないのかしら?」
鼓動が酷くうるさい。触れられもしないのに、そっと腕を伸ばして、力を込める。
これで倒れて二人が私に会いに来てくれればいいのに。そんな、邪な感情を抱きながら。
当然下駄箱に触れることはなく、するりと手が通っていく。そのまま力を抜くと、ぽすりと私の元に落ちてきた。あぁ、なんて虚しい。私はこんなにも虚しく辛く悲しく死んでいるのに、ふたりは楽しそうに笑いあっている。恨めしさと虚しさ、心のどこかで感じる安堵感に、なんとも言えず下駄箱に背をあずけ座り込んだ。その時、大きな音と共に下駄箱が揺れて倒れて行く。体なんてない筈なのに、手の平に汗をかいている気がして落ち着かない。二人分の悲鳴は響かなかった。物音を聞いた教師が駆けつけてきて、今すぐにも逃げ出したい衝動に駆られる。なのに、固まったかのように足が動かない。視線を下駄箱に戻す。晃の目から涙がこぼれていて、自分が何をしたのか理解する。理解したその刹那、頭が割れるような痛みが襲いかかった。
だってだって1人で寂しくて誰もいなくて話せなくて寂しくて寂しくて寂しくて!!!!
?
……ねぇ…晃。
………あなたどうして笑ってるの?
最初のコメントを投稿しよう!