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口数の少なく喋るのが下手な私は、後輩との下校は愚か、中学校の友達と笑って下校した事すら片手で数えられる程のものだった。そのせいか、気分が上がって仕方がない。
「絢愛先輩、今度二人で遊びませんか?」
桜木さんが私の横まで駆け寄って笑顔で話す。その人懐っこい笑顔に思わず頬が熱くなった。少し人慣れしなさ過ぎているのかもしれない。
「えっ?私でいいの?私友達と遊びに行ったことなんて無いし…」
返事をする前に余計な事を思わず口走る。しまったと思って口を抑えるが、桜木さんはくすくすと楽しそうに笑った。そんな顔もまた可愛い、なんて思ってしまって。
「絢愛先輩だからです!あ…仲良くなってそんなにたってないのに迷惑でした?雫と1番仲良かったのって絢愛先輩だし……」
余計な気を使わせて、少し申し訳なさを覚える。本当に、可愛い後輩だ。
「気にしないで!それに…桜木さんの事は前々から春宮さんからよく話を聞いてたし…是非、遊びに行きたいわ」
桜木さんの手を取って笑う。桜木さんも、優しく嬉しいですと返事をしてくれた。そんなやり取りをしながら、下駄箱に上履きを戻す。
「わ、先輩の靴可愛いですね……でも体育は大変じゃないですか?」
最近買ったばかりの自分で選んだ靴を褒められて、思わず頬を染めてしまう。
「あぁ……体育のある日は履いてきてないの。汚れちゃうし……初めて自分で選んだから。」
最後のやっぱり余計だったかも?!なんて考えてあたふたしていると、桜木さんがふふっと笑って、1歩下がる。
「でも、足元が可愛いと気分上がりますよね…いいな、先輩ぜったいご機嫌ですね!」
「ふふっ、バレちゃった?これを履いてる日は凄くいい気分なの!でも…嫌なことばっかり起きちゃうんだけどね。」
そう言って少し体を傾けると、少し焦ったような桜木さんと目が合う。
「あっ、先輩気を付けてください…そこの下駄箱、不安定なことで有名なんですから」
振り返ると、下駄箱は今にも倒れてしまいそうなほど不安定だった。
「ほんとだわ……新しくならないのかしらね?」
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