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体が浮いている。
見慣れた校舎の上に私は居た。
落ちてしまうと焦って足をばたつかせたが、宙を蹴っただけで何も起こらない。直感的に考える。私の夢が叶ったのだと、私は魔法少女になれたのだと思うことにしよう。現実的では無いが……最善なような気がした。チャイムが鳴って見知った顔のクラスメイト達が教室に入って行く。
…私も行かなきゃ。
ゆっくりと窓に近づき、廊下に降りると、顔を顰めた儚さを纏う美人が歩いてきていた。
「茅野さん!」
思わず彼女を呼び止めたが、こちらを一目見る事もせず去ってしまった。
相変わらず意地の悪い人だと考えながら、教室に入る。私の机を見ると、花瓶にいけられた花が置いてあった。
…なにこれ?
腹の虫の居所が悪かったのか、怒りが抑えきれなくなる。あたりを見回しても、目が合う人はいない。
私のことなんか見えても覚えてもいないみたいに。目が合う事はないのに、生徒たちの視線は時々花瓶を捉える。その後は、決まって気不味そうに目を逸らす。どうしようもなく不快感が募って、拳を握る。震える拳が少し痛んだ。
視線を泳がせると,後ろの席の女子生徒と目が合う。茅野さんをよく嫌っていたグループの、リーダーのような位置にいた子。
…よく、私の夢を馬鹿にした人。
嫌な感情を取り繕うように笑ってみせる。彼女の顔はどんどんと青ざめていっていて、ガタガタと震える体を抱えるようにして私から目をそらす。あまりに失礼なその態度はまるで化け物でも見るような顔で、取り繕ったはずの嫌な感情が溢れ出す。
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