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「…………そうかもね。…でも雫に会いたかったんだもん…………」
先程の顔とは違う寂しそうな顔で、私の腰に手を滑らす。そのまま晃は私の胸に体を預けてしまった。私より背の低い晃の体温が嫌という程私にうつる。先程私から抱きついた時より晃の香りが私に纏う。
心地いいはずの心音に何処か違和感を覚えた。
違和感を抱えながらも、晃を抱きしめ返そうとする。その内に、晃から身を離されてしまった。
「ねぇ、雫の将来の夢は?夢は何?」
私の手を取って上目遣いでこちらを見あげている晃には、女の私でも誘惑されてしまいそうな魅力があった。
「夢?うーん……」
改めて、私の夢を考える。やはりすぐ浮かんだのは魔法少女で、現実味の無さを改めて実感させられてしまう。でも、もう叶ってしまった。それなら何だろう?
「やっぱり……魔法少女?」
晃が少し焦った顔をしつつも、微笑んで私の目を見つめる。確かに、魔法少女は私の人生の軸と言ってもいいほど憧れて、癒されて、私を支えてきてくれた羨望の塊だ。でも……
「うーん……」
もうひとつ、夢があった気がする。晃の顔をもう一度ひとめみると、やはりどこか焦っているようだった。
「そ……そんなに悩むこと?」
私に質問を投げかけるその顔は何かに怯えているようで、今まで見た事がない。
「だって、あった気がするんだもん。」
そう言うと、少し落ち着いた様子でぎこちなく微笑む晃がいた。
「難しかったら……今じゃなくてもいいよ?」
一向に目が合わない晃にやはり違和感を覚えるが、年頃の女の子を詮索するのも野暮なものだ……それより、今は私の夢を思い出さなければ。
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