149人が本棚に入れています
本棚に追加
3話 愛人カリーナの野望
まさかカリーナがレイモンドとの子を欲しがっているなんて。
夫は馬鹿げた笑い話だと私に聞かせたようだけれど笑える要素などなかった。
彼は子供を作る気はないようだが、それは子供を作る行為をしないという訳ではないだろう。
避妊に対しても快楽重視で適当なのはわかっている。
けれど愛人に子供ができるのは困る。私はまだ跡継ぎを出産していない。子の性別もわからない。
もし私と夫の子が女児で、カリーナとの間の子が男児だったら厄介極まりない。
身分の差、正妻と愛人の差があったとしても子供にはどちらも伯爵家当主の血が流れているのだ。
今でさえ私に対し悪びれもせず、寧ろ憎々しげにこちらを見てくるカリーナだ。
レイモンドとの子を不義の子として目立たず慎ましく育てることも、私に頭を下げて預けることもしないだろう。
カリーナは彼女は伯爵夫人の座を狙っているのかもしれない。
レイモンドとの子供を欲しがるのも成り上がる手段の一つかもしれなかった。
ただ当のレイモンドに私と離婚しカリーナと再婚する気は全くない。愛人に対して情熱的にふるまう彼の芯にある女性への冷酷さを私は知っている。
だが私がカリーナと別れるように頼んでも、私のことすら見下している彼は言うことを聞いてはくれないだろう。
レイモンドがカリーナに飽きれば即彼女は捨てられるが、今はまだ気に入っているようだ。
けれどカリーナに自分との子供ができたなら面倒臭がって屋敷を追い出すだろう。
レイモンドには自己愛しかない。女性は総て彼にとって玩具か召使に過ぎない。
流石に不義の子を孕み、男にも捨てられて屋敷を追い出されるのは哀れすぎる。何よりそんなカリーナの子供として生まれる命が気の毒でしかない。
私は憂鬱な気持ちを堪えて伯爵夫人としてカリーナと話をする決意をした。
最初のコメントを投稿しよう!