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戦士の魂
計器類を睨みつけ、操縦桿をほんの少し動かしながら冷汗をかく。
「高度を少しずつ落としながら速度を落とす。
滑走路を正面に捉えたら角度をチェックして ───」
機体のバランスが固定され、基地を視界の中心に捉えた。
「よし。
グライドパスに乗せたな。
これならすぐに実戦投入できるぞ」
タッチダウンするとエアブレーキを立てる。
一連の動作を調和させる技術が必要になる。
戦闘機などほとんど乗ったことがないゼツだったが、すぐに適応するところは流石だった。
「ふう、寿命が縮むぜ」
ヘルメットを取ると、仲間たちが拍手で迎えた。
「よお、撃墜王!
今夜のエースはルーキーかよ」
「てか、1機で10機蹴散らすか、普通」
パイロットスーツ姿で群がる中から、進み出た者がいた。
「少尉殿。
華々しいデビューですな」
斜めに構えてから、ラルフを見上げるようにした。
握手を求められて掴んだ右手は興奮で震えたままである。
「ファイズ・ハーン・アリ―大尉だ。
ラルフ・ノエル・オリベール、そしてゼツ。
地獄の激戦区へようこそ。
ナセル指令がお呼びだ。
一緒に行こう」
3人は群衆をかき分けて管制塔へと向かった。
「あの、勝手に出撃して、何かお咎めがあるのかな」
落ち着きを取り戻したラルフの顔に、不安の色が浮かんだ。
外は砂まみれのコンクリート造りである。
基地の入り口には2重のドアがあって、砂を防いでいる。
入れば窓が少なくて、昼間でも電灯が点いている。
長い廊下がぐるりと取り囲み、兵士たちの小部屋が区切られている。
鉄板を仕込んだ壁は、殺風景だった。
砂嵐が起こると、外の滑走路が埋もれるほどになる。
だから、兵隊たちも砂下ろしに駆り出されることもあるのだ。
出撃の合間にさまざまな仕事が待っているようだった。
「ふふふ。
俺が決めることじゃないが、ナセルという男はただの軍人ではない。
規律を乱したわけではあるまい。
心配するな」
管制室に入ると、ナセル指令が管制官に指示を出していた。
「ああ、ラルフとゼツだったな。
忘れられない名になりそうだ。
こちらのアリ―は、うちのエースだが過去の話になってしまったな。
明日は私も出る。
お手並みを是非見せてくれ」
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