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「歩ちゃん、よく考えなさい。住所が無かったら学校に通えないでしょ?」
わたしは渋々制服に着替え、叔父さんの車の後部座席に叔母とともに乗車した。車は山の上にあるダムの駐車場に停まった。
「それじゃ、降りよっか。ひとりニーゼロでいいか聞いたらオッケーだってさ」
わたしは車から降りるように促され、降りたと同時に突き飛ばされた。目出し帽を被った男に囲まれた。男の力でもみくちゃにされたわたしは、無力にその場に押し倒された。
「おいおいこの制服あそこの本物かよ? いいのか? ホントに?」
「喜べ、本物だ。ついでにだが、まだ通い続けたがってやがるから、メチャクチャにしてわからせてやってくれ」
わたしは制服を破かれながら、何本も何本も挿し込まれて中に出された。叔父さんは、コトを済ませたひとりひとりから万札を受け取っていた。
「歩ちゃん、もし出来ちゃったら言いなさいよね。この人、腹パンで出来ない身体にさせるのがものすごく得意だから」
「な、歩ちゃん。若い女って、穴使わせるだけで金稼げるだろ? オモテの仕事なんかしなくっても今日だけで目標達成だ。この5万は、今回はおまえが好きに使っていい。たまには美味しいものでも食べて、オイシイ思いして味をしめろ」
わたしはニーゼロかける人数から15万を差し引いた残りの額を投げられた。わたしは制服を買い直した。
◇◆◇
「園田くん、上がりだよ。これ持って帰っていいけど、毎日のように廃棄の弁当じゃ身体に悪いから、また妹といっしょにご飯食べにおいでよ」
「はい、ありがとうございます。お疲れさまでした」
8月と夏休みが終わり、残暑がまだまだ厳しいなかで二学期が始まった。
バイト先の店長は、仕事には厳しいけれどもわたしに優しくしてくれる。奥さんとふたり暮らしで、いまのわたしの親みたい。
なんでか聞いたら、昔危ない雑貨屋をしてて足を洗って酒屋を始めて、フランチャイズでコンビニになって店が軌道に乗ったころには夫婦ともども子どもを作れる年齢ではなくなってしまっていたらしい。
だから従業員には真っ当な生きかたをしてほしいんだって。
「世の中にはいろんな人がいるよね」
真っ当ではない生きかたをする叔父夫婦の暮らす家への帰り道、わたしはそうひとりごちた。
「安西……?」
そんなバイトを続けるなかで、若い男が缶コーヒーを買っていった。メッシュキャップを目深に被った男は目が合うと、舌なめずりをしお釣りを受け取り帰っていった。
「安西だ……。私服だけど間違いない」
わたしの背中に悪寒が走った。もしかして、アルバイトすらも侵食されてしまうのかと。
「お疲れさま、園田さん」
「佐古……、さん?」
帰宅しようと勝手口から外に出ると、佐古さんが待ち伏せていた。
「早速だけど、安西が待ってるって言えばだいたいは見当つくわよね?」
わたしは黙って頷くと、佐古さんの後ろをついて行った。ここでヘタに抵抗したら明日学校で何をされるかわからないし、このバイトも失いかねない。
裏路地から大通りに向け歩いて行くと、安西と深沢と合流した。その足はホテル街へと向かい、そしてホテルの門をくぐった。おおよその察しがついて、思い出した嫌悪感のその全てを諦めた。
「こんばんは、メガネデリバリーでーす」
安西が、ホテルの部屋のドアを叩いた。ドアがなかから開かれた。
「いらっしゃいませ~」
「え……、他にも……」
わたしは数に愕然とした。田島だけじゃない、クラスの男子が何人も居る。わたしは連行される犯人のように両脇を固められながら部屋の隅に座らされた。
「佐古、旦那さんは?」
旦那? 彼氏居るんだ。
「もうバイト上がってこっちに来てる頃だと思う」
「旦那さん?」
「アンタたちどうせ見たでしょ。あたしのダーリンであんたたちの先輩よ」
見たってどういうことだろう。状況が飲みこめない。
「あたし、シャワー浴びてくる。ダーリン、石鹸の香りが大好きなの」
佐古さんはバスローブを手に取ると、恥ずかし気もなく衣服を脱ぎ去り全身くまなく洗っていった。
「なかなか大所帯だな。安西くん、相変わらずずいぶんといい趣味をお持ちのようだね」
「先輩ほどではないですよ」
安西がインターホンで顔を確かめオートロックの扉を開けると、佐古さんの彼氏さん?が入ってきた。
「そうか。それよりも、かつみはどこに? こんなこといち早く終わらせたいんだけどね」
一体何をするんだろう。それにしても、この人見た目はインテリ大学生な感じだけど、顔つきに締まりがあってこの大人数にも安西にもちっとも物怖じしない。
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