ぺ くるんど

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 私は道の先で青が点滅し始めた横断歩道をかけ足で渡ると、重厚な扉の前にたどり着いた。置いてある看板には、『森宮(ただし)展』としか書いておらず、知りたくばこの門をくぐってみよと言われているような様だった。私は重たい扉を開けてみた。中は暗く、けれども壁の何ヵ所か照明に照らされているものがあった。絵であった。冬の山を描いたものもあれば緑が生い茂る樹木を描いたものもあったりと、どれも日本画のようなタッチで描かれていた。流れるように奥へと進むと、そこには人魚がいた。そう思えるほど、等身大くらいの大きさで人魚の絵が飾られていた。岩に横たわる人魚は濡れた髪を垂らしながら、じぃっとこちらに目を向けている。私は人魚から目を逸らすことができなくなっていた。
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