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こんな事を続ければいつか、いや近いうちにとんでもなく強い奴が来る。それか別の裏の人間が勢力拡大にやってくるか。
いずれにせよ、今が引き際だと思ってる。ゲームと同じだ。勝ち続けている今がのっている時じゃない、もう地獄への入り口が開いちまってる。
ベモンは金に目が眩んでそれが見えていないらしい。ここらを取り仕切ってるボスだからその辺の見極めはできてたはずだが。莫大な金に目が眩むのは仕方ないか、ベモンだって人間だ。そりゃ、貴族から巻き上げる金は今までの比にならないからな。
巨大になってきたベモンの組織から抜け出すことができない以上、負けた時が俺の死ぬときだ。死ぬのって、痛くて怖いのだろうか。死ぬんじゃないかって目は散々味わってきたからよくわからない。俺の下で働けと言われた時に言われた。
「これからも末永くよろしくな」
今も勝つたびに言われる、次も上手くやれ、機嫌が良い時はまたよろしくな。これを言われると「ああ、次があるのか」と勝手に「次」を認識してしまう。刷り込みができちまってる、最悪だ。俺はいつまであいつの前で曲芸をし続けるんだろう。芸をするのは犬だろ普通。
潮時だ、組織もベモンも。莫大な金を手に入れて次はファミリーの幹部を狙い始めているらしい。そんなの消されるだろ。どうせなら俺の幕引きは、俺が自分で選びたい。そう思ってゲームを続けている。
今日の相手はたいした金にならなかった。貴族でも金がない奴だったらしい。最近は莫大な金を落とす奴だけに絞って来たからベモンの機嫌が悪い。
貴族はゲームを嗜む。必然的に俺の相手もだんだん強くなってきた。イカサマを見抜く奴も出てきている。そういう時は俺が本気で勝負をしかけてなんとかしのいじゃいるが、限界が近い。そう言ったところで聞いてもらえないだろうけどな。
機嫌が悪いと部下を殴る蹴るは当たり前で、側近たちが俺を生贄にするのはいつものことだ。今日は骨が折れないといいな、と思っていると入り口がざわついた。
「へえ~、ここが賭場? 小汚いね!」
「ゴミ溜めなのだから仕方ありません。それよりシャキっとしてください、へらへらしていたらヴェンゾン家の沽券に関わりますよ」
会話からして貴族の坊ちゃんか。興味本位で裏の賭場に行きたいと言うお坊ちゃんは多い。また丸裸にされるんだろうなあいつら、と思っていると。
「あれ? こんなところに子供がいる。大人しか入れないんじゃないの?」
「下働きか何かでしょう」
目ざとく俺を見つけて駆け寄って来る。見た目はもう完全に金持ちのぼっちゃんだ。身に着けているものが高級で宝石がジャラジャラ。いかにも馬鹿っぽい。
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