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朝六時
暗い瞼の中で眩い光が差し込み、目を開いた。
意識が浮上し、ゆっくり身体を起こす。七月だというのに、冷たい朝の空気に思わず身体をさすった。あの日の冷たさが蘇る。
「まだ、引きづってるのかなぁ……」
自分の女々しさに呆れて笑ってしまう。それだけ、私にとってはトラウマだったのかもしれない。
ふとカーテンから差し込む太陽の光に目を向けた。夢に出てきた金髪の彼の顔が浮かんで、身体に、顔に、熱が戻る感覚がする。
「よし!」
切り替えるように意味もなく、勢いよく布団をめくってベッドから立ち上がる。ジャージに着替え、習慣のジョギングをする。それが終わったらシャワーを浴びて身支度を整え、朝食の準備とお弁当を作った。
お弁当をカバンに入れた後は、玄関の鏡の前で身だしなみをチェックする。白いセーラー服に、規定された長さの紺色のスカート。緩くハーフアップされた髪型。色素の薄い瞳の上に、少し上向けの睫毛がぱっちりとした目元に印象づけさせている。うん、問題ない。
少し前髪を整えてから私は扉を開ける。庭の笹に飾った短冊が蝉の声で風鈴のようにゆらりと揺れた。
朝六時。私はいつもこの時間に、私立夜名原高校へ登校を始める。
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