18人が本棚に入れています
本棚に追加
いつものように祈っていると横から視線を感じて目を開く。視線の元を追うと、横に同じように屈んで、私をじっと見る叶夜さんがいた。
「……なんですか?」
じとっと目を細めて問いただすと、柔らかい笑みを浮かべ、叶夜さんはすっと私の髪を一房とって指に絡ませた。
「いいや。相変わらず綺麗だなと思って」
「は!?」
「綺麗にしてるよな、髪」
「……」
相変わらずこの人は心臓に悪い。叶夜さんはこういう人だ。
私は赤くなったであろう顔を隠すように、意味もなく前髪を整える振りをした。
そんな私を気にする素振りもなく、叶夜さんは立ち上がって持っていた煙草に口をつけて、ふぅっと煙を吐く。
「叶いそうか?」
ふいに顔を向けてきた叶夜さんにドキッとしたのは一瞬。叶夜さんの質問に誤魔化すように私は目を伏せる。
「さあ」
曖昧に答えながら、スカートを整えてそのまま叶夜さんに背を向けた。
朝七時。私たちは毎朝この祠に祈りを捧げている。
最初のコメントを投稿しよう!